読書と演劇

演衆やむなし 第十一回公演「ケンジとススムの星めぐり」

演出ノート

読書と演劇は似ている。
本を読むとき、私は想像力を働かせ、そこに書かれている言葉からあたまのなかに情景を描く。演劇をつくるときも同じで、想像力を働かせながら、戯曲に書かれた世界を立体的に舞台上に立ち上げていく。演劇の場合、複数のつくり手やお客様の想像力も作用して、より複雑なものになる。

広大な図書館や書店は、まるで本の森のようだ。森は奥深く、先が見えない。書棚に並ぶ無数の本は、世界は無限に広いことを教えてくれる。
自分にいま見えている世界だけがすべてではないと知らされることは、私にとって、畏れであると同時に、希望であり救いでもある。

私たちのつくる演劇もまた世界のほんの一部だが、そこに何かしらの希望を感じてもらえたなら、これほどうれしいことはない。

中埜コウシ

 

※演衆やむなし 第十二回公演「ケンジとススムの星めぐり」(2024年10月26日〜27日/金津創作の森 美術館アートコア ミュージアム-2)当日パンフレットより