福井県社会福祉協議会のラジオ放送講座「いきいきセミナー」(2016年10月放送)用に書いた原稿です。


歌のちから

歌には力があります。喜びの歌、悲しみの歌・・・。入学、卒業、就職、出会い、結婚、引退、別れ・・・、人生のさまざまな節目にも、私たちは歌をうたいます。歌に元気をもらい、歌に疲れを癒やす。また、歌には思い出があります。ある歌を聞くと、その曲をよく聴いたりうたったりしたときのことを思い出すものです。私たちの人生は歌とともにあるといっても過言ではありません。歌をうたうのは苦手という方もおられるかもしれませんが、歌そのものが嫌いという方はあまりいらっしゃらないのではないでしょうか。

いまふたたび注目!うたごえ喫茶

いま「うたごえ喫茶」が再び注目を集めています。皆で一緒に歌をうたう楽しさ、一体感や、歌を通した人と人とのふれあいが見直されているのです。

「うたごえ喫茶」は、歌唱リーダーの進行のもと、ピアノやアコーディオン、バンドなどの生演奏に合わせて、歌集を手に店の客が一緒にうたう喫茶店です。もともとは1950年(昭和25年)頃、自然発生的に誕生し、1960年代には一世を風靡、1965年(昭和40年)頃のピーク時には、全国に200前後の店があったといいます。(福井にも何軒かあったそうですが、あいにく詳しく存じません。情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ぜひお聞かせいただければと思います。)

労働運動や学生運動とも相まって人気を博したうたごえ喫茶ですが、運動の衰退とともにブームも下火となり、やがて1970年代後半にはカラオケスナック、1980年代にはカラオケボックスにとって代わられていきました。

ところが近年、当時のうたごえ喫茶を体験されている60代以上の方が仕事をリタイアされ時間の余裕ができたこともあり、ブームが再燃。加えてうたごえ喫茶を知らない若い世代にも、カラオケとは違う魅力が受けています。

うたごえ喫茶の老舗・東京新宿の「ともしび」では、全国各地の喫茶店や公民館などに出向いての「出前うたごえ」を開催しており、その数は年間200ステージにもなるそうです。また、岡山県倉敷市の「湊たましま大歌声喫茶」など、うたごえ喫茶でまちづくりを進めている例もあります。

福井芸術・文化フォーラムの取り組み

私の勤務するNPO法人福井芸術・文化フォーラムは、舞台芸術に関する事業の企画・運営を行う市民活動団体です。福井市文化会館を拠点に、演劇や落語などの鑑賞事業、市民の皆さんとの舞台作品づくり、担い手の育成など、年間15ほどの事業を行っています。

不定期ではありますが「うたごえ喫茶」にも取り組んでおり、福井市文化会館をはじめ、市内の公共施設、喫茶店などを会場にこれまで10回ほど催しを行いました。歌唱リーダーには、前述の「ともしび」さんを迎えたこともありますし、地元の声楽家がつとめたこともあります。歌集はいつも手づくりです。

印象深い思い出は、会場に杖の忘れ物があったこと。杖をついていらしたお客様が、歌をうたい元気になって帰られたのかと、微笑ましくなりました。

歌の効用、うたごえ喫茶の魅力

(医学の専門家ではないので詳細は省きますが、)歌をうたうことは、心肺機能の向上、血行促進・血圧の安定、ストレス軽減などをはじめ様々な健康促進効果があるほか、脳の活性化を促し、認知症の予防や治療にも効果が確認されています。

上手くうたおうと思う必要はありません。大切なのは、楽しんでうたうことです。自分の声とまわりの声が一体となって大きなハーモニーが生まれるのはとても気持ちよいものです。歌や演奏を聴いているのは好きだけど、実際に自分がうたうのはちょっと、という方でも大丈夫。うたわずに聴いているのも楽しみ方のひとつです。

多くの曲をうたいますので、当然知らない歌も出てくることがあるかと思います。そんな時はお休みして聴いているだけも大丈夫ですし、歌集を頼りにみんなに合わせて練習してもよいでしょう。その歌の思い出を語り合うのもよいですね。絶対にうたわなければいけないということではありませんので、ご自分の好きな方法で楽しめるのがうたごえ喫茶の魅力です。

いかがでしょうか。地域の仲間で集まって公民館などで開催してみるのも楽しいかもしれません。

放送では実際に何曲か曲もおかけする予定です。一緒に口ずさみながらお楽しみいただければと思います。