いくつもの「人生最後」を重ねながら

演衆やむなし 第十一回公演 「八百屋のお告げ」

演衆やむなし第十一回公演にようこそお越しくださいました。

今回の演目は「八百屋のお告げ」。

物語の主人公・水野多佳子は、近所の八百屋の大将から、思いもよらないお告げをされてしまいます。
「あなたは今日の夜中の十二時に死ぬ」という八百屋のお告げ。
突飛ですが、「人はいつか必ず死ぬ」という真理より、かえって身に迫るものがあります。

今日が人生最期の一日と告げられたら、あなたはどう過ごしますか?

誰かのことを想うでしょうか。
どこかに出かけるでしょうか。
それとも、静かにその時を待つでしょうか。

私ならどうするだろうなあ。
何でもできそうな気もするし、何にもできずに、あたふたと一日を終えてしまうかも。

思うに私たちは、今月最後の今日、今年最後の今日というように、いくつもの「人生最後」を重ねながら、日々を生きているのかもしれません。

そんな私たちへの応援歌のつもりで今作をつくりました。

時は2006年、東京・方南町の水野家の一軒家が舞台です。

会場のニシワキビルは築約50年で、多佳子と同世代。ここ「桃源郷」は、かつてダンスホールでした。昭和の歓楽街のレトロな雰囲気を残すこの建物ですが、来年取り壊されることが決まっているそうです。
そんな場所でこの作品を上演できることに、不思議なめぐり合わせを感じずにはいられません。

やむなし久々の長編作品です。最後までごゆっくりお楽しみください。
本日のご来場、まことにありがとうございます。

演出 中埜コウシ

 

※演衆やむなし 第十一回公演「八百屋のお告げ」(2023年11月29日〜12月10日/桃源郷)当日パンフレットより