何年か前の新聞広告に、こんなキャッチコピーが書かれていました。
「ボクのおとうさんは、桃太郎というやつに殺されました。」

私たちのよく知る昔話は、桃太郎が鬼退治に成功してめでたしめでたし、というストーリーですが、実はこれは桃太郎目線の物語であり、鬼の子どもから見るとまた別の物語があることを、このキャッチコピーは教えてくれます。

私は私の目線でしか世界を見ることができない。私が見ているものは、世界のありのままからしたら、ほんの一部分でしかないのでしょう。
ほんとうはそこにあるのに、こぼれおちるもの。
ーーそんな思いから、今回の舞台をつくりました。

本作は、これまでの戯曲ありきの作品のつくり方とは異なる手法をとっています。
すべてのシーンやセリフは、稽古場にて、福井の地で暮らす劇団員たちの生活や身体から生まれました。それぞれのシーンは、つながっているのかもしれませんし、そうでないのかもしれません。私たちの人生のさまざまな出来事がそうであるように。

身近な物語としてお楽しみいただくとともに、世界の見え方がすこしだけ変わるきっかけになれば幸いです。

構成・演出 中埜浩之

※演衆やむなし第三回公演「こぼれおちるもの」(2017年2月17日〜26日/福井 北ノ庄クラシックス)当日パンフレットより