どう生きるか、どう死んでいくか。

演衆やむなし第七回公演にようこそお越しくださいました。
今回、駅の待合所で上演するにあたり、「街」や「道」をモチーフにした二作品を選びました。

別の劇作家による別々の二作品ですが、いずれも1995年頃に書かれたこれらふたつの戯曲には、時代や人への共通のまなざしを感じます。

当時日本ではバブル崩壊後、阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件が相次ぎ発生しました。以来、この国を覆う潜在的な不安や息苦しさは、現在弱まるどころか、ますます強まっているような気がしてなりません。

「パノラマビールの夜」は山頂の展望台にあるビアガーデンを舞台に、偶然居合わせた人たちが、いまは亡き人や街の話をします。残された側、生きていく側の「どう生きるか」の物語です。

「この道はいつか来た道」はホームレス風の男女の「愛」の物語。身を寄せ合う二人の姿は、震災後のようでもあり戦後のようでもあり、この国の未来の光景のようでもあります。

この先の時代を、どう生きるか、どう死んでいくか。希望は見いだせるか。
戯曲のまなざしの先にあるものを、お客様とともに見つめてみたいと思います。

本日のご来場、まことにありがとうございます。

演出 中埜コウシ

 

※演衆やむなし第七回公演「パノラマビールの夜」「この道はいつか来た道」(2019年8月21日〜25日/田原町ミューズ)当日パンフレットより